副業リスキリング講座で学ぶコミュニケーションスキル
価値観の違う相手と信頼を築く技術
会社員として働いていた頃は、同じ会社という前提を共有した相手とやり取りをする場面がほとんどでした。ところが副業を始めると、お客様や依頼主、コミュニティの仲間など、価値観も背景も異なる相手と一からゼロベースで信頼関係を築いていく必要があります。話がうまいかどうかではなく、相手にきちんと伝わり、信頼してもらえるかどうかが副業を続けられるかを左右します。ここではこれから副業を始めたい方に向けて、副業リスキリング講座で学ぶコミュニケーションスキルとして信頼関係を築くための考え方をご紹介します。

副業にコミュニケーションスキルが必要な理由
どんなに素晴らしい商品やサービスを持っていても、それを人に伝え、信頼してもらえなければ副業として続けていくことはできません。コミュニケーションというと生まれ持った性格や才能のように思われがちですが、実際には順番とコツさえ知っていれば誰でも身につけられるスキルです。人見知りだから、話すのが苦手だからと諦める必要はありません。
実際、東京リスキリングアカデミーに来られる方の中にも、人と話すのが得意ではないから副業には向いていないと感じている方は少なくありません。ですが、話がうまいことと信頼されることは必ずしも同じではありません。口数が少なくても、相手の話を丁寧に聞き、誠実にやり取りを重ねている方ほど、長く続くお客様との関係を築けているケースも多くあります。

受け手には7つのレベルがある
同じ言葉を発しても、相手の受け取り方には段階があります。
①そもそも聞こえていない
②聞く耳を持たれず拒絶されている
③音としては聞こえている
④頭で内容は理解できている
⑤イメージとして伝わってきている
⑥心に響き感動している
⑦腑に落ちて動きたくなっている
という7段階です。 伝える側がどれだけ熱を込めても、相手が④の「理解」までしか届いていなければ行動にはつながりません。「言ったのに伝わらない」というすれ違いの多くは、実はこの④と⑤の間の壁を越えられていないことが原因です。
目指したいのは⑦の「動きたくなる」レベルまで届けることです。 また人には過去の経験をもとに物事を消化する「ケアタイプ」と、未来への推測をもとに消化 する「ホープタイプ」がいます。ケアタイプの人には過去の実績や具体的な事例を丁寧に示すと安心感が伝わりやすく、ホープタイプの人にはこれから先に広がる可能性を語ると意欲に火がつきやすくなります。相手が今どのレベルにいて、どちらのタイプに近いのかを見極めながら言葉を選ぶことが、メッセージを深く届けるための第一歩になります。

センターサークルで向き合う
価値観の違いや立場の上下、勝ち負けの意識を一度手放し、フラットな自然体でお互いに向き合う場を「センターサークルに立つ」と表現します。 変化の速い今の時代には、一方的な指示ではなく対等な立場から双方の成果に向かう姿勢が欠かせません。誰かに何かを伝えるときは上から言い聞かせるのではなく、同じ円の中に立って対話をするという意識を持ってみましょう。
これはお客様や依頼主との関係でも同じです。「教える側・教わる側」「売る側・買う側」という上下の構図に無意識に立ってしまうと、対話は一方通行になりがちです。自分自身が今どちらの立場に偏っていないか、円の中心に立ち戻れているかを振り返ることが、対等な関係づくりの出発点になります。

心には扉がある
信頼関係を築くには、相手の心の扉が開いている必要があります。扉が閉じたままではどんなに正しい言葉を選んでも届きません。 話せば分かると思いがちですが、価値観が多様化した今、まず大切なのは相手の価値観そのものに興味を持つことです。
「同じことを何度も言わせるな」という考え方も、上下関係の発想から生まれるものです。共に成果を上げるパートナーだと捉え直せば、何度でも丁寧に繰り返し伝えてあげることこそが本質だと分かります。「いつかは分かってくれるはず」という考えも、自分の伝え方を磨く努力を怠る言い訳にしてはいけません。伝わらないのを相手のせいにするのではなく、「どう伝えれば届くだろうか」と自分の表現を磨き続ける姿勢が、扉を開き続けるための力になります。

質問の達人になる
信頼関係を築く上で欠かせないのが、自ら問いを立てて対話を深める「質問の達人」であることです。人は命令されると反射的に反発したくなるものです。「〜しなさい」という命令形を「〜してみたらどう?」という質問形に変えるだけで、相手自身の内側から主体性を引き出すことができます。
質問には組み合わせることで対話に幅を生む視点があります。「If」は未来の想像を広げる問いかけ、「Why」は過去の理由を掘り下げる問いかけです。「Open」は選択肢や話題を広げる問い、「Close」ははい・いいえで答えられる問いです。場面や相手の状態に応じてこの組み合わせを使い分けてみましょう。たとえば「もしうまくいくとしたら、どんな形がいいと思う?」というように相手の可能性を広げる問いかけは、副業の相談やヒアリングの場面でもそのまま使えます。
クラウドソーシングでの案件のやり取りやSNSでのお客様対応、オンライン講座の受講生とのコミュニケーションなど、副業には文字でのやり取りが多い場面があります。文字だけのコミュニケーションでは声のトーンや表情が伝わらない分、相手 の受け取り方の段階(今の説明は④理解で止まっていないか)を意識して言葉を選ぶことがより大切になります。返信の一文目に結論を書く、疑問形で相手の状況を確認する、といった小さな工夫の積み重ねが、初めて依頼をくれた相手からの信頼につながります。

副業リスキリング講座で学ぶコミュニケーションスキル
副業を始めたばかりの頃は、初めての相手とやり取りする場面が続きます。ここで意識したいのが、相手が今どの受信レベルにいるかを決めつけないことです。「説明したから伝わっているはず」と思い込むと、実際には③の「音として聞こえている」段階で止まっていることに気づけません。返信が短い、反応が薄いと感じたときは、伝え方が悪かったと自分を責めるより先に、相手が今どの段階にいそうかを一度立ち止まって考えてみましょう。
また、はじめての依頼主とのやり取りでは、いきなりセンターサークルに立とうとしても難しいことがあります。相手にも「初めて依頼する副業の人」への警戒心があるからです。そんなときは、まず心の扉を開いてもらうことを優先します。実績を誇示するのではなく、相手が今困っていることに丁寧に耳を傾け、質問を重ねながら理解しようとする姿勢を見せることが、扉を開く一番の近道です。
ここまでご紹介したコードや技術は、あくまで道具にすぎません。最も大切なのは、口調や表情といった伝え方そのものに込められるエネルギー、つまり「あり方」です。
7つの受信レベル、センターサークル、心の扉、質問の達人。どれも特別な才能ではなく、日々の意識と積み重ねで磨いていけるものです。目の前の相手が今どのレベルにいて、心の扉がどれくらい開いているのかに意識を向けながら、命令ではなく問いで向き合う。この積み重ねが、副業に役立つコミュニケーションスキル習得への一番の近道になります。 最初から完璧に使いこなす必要はありません。今日のやり取りでひとつだけ、命令形を質問形に変えてみる。それだけでも、相手との関係は少しずつ変わっていきます。
